HPで管理するのが色々と面倒になってきたので、 とりあえず作成。
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キィは1歳程度の子供としては珍しく、人見知りをしない。
日々、強暴な魔物を相手に命がけで戦い、
体力も、精神をすり減らして帰る生活のなかで、
にこにこ嬉しそうに笑いながら甘えてくる、
よちよち歩きのちみっさい人は、
メンバーの多大な癒しとなっていた。
鉄火にとっても例外ではなかったが、
生憎、愛想のいいほうではない彼は、
子供の扱いが不得手であった。
どう接していいのか悩むうちに、
キィのほうが勝手に判断した模様で、
「別段、いじわるもされないけど、
あまり遊んでくれないし、世話も焼いてはくれない人」
として、どうでもいい扱いを受けるようになった。
それはそれで寂しい気もするが、
無視されるわけでも、まして、嫌われているわけでもない。
むしろ、統括係として、
多々、メンバーを叱咤しなければならない中で、
「怒ってばかりの怖い人」と認識されていないだけマシだ。
きゃいきゃいと騒ぐ仲間達と小さい人を眺めながら、
自身はまったりと事務をこなす、
適度な距離感が鉄火は嫌いではなかった。
その日も、若干いつもより早い時間であること以外は変わりなく、
帰宅して、靴を脱いでいた鉄火の耳に、
とっとっとっとと、小さな足音が転がり込んできた。
玄関に取り付けられた鈴の音を聞きつけて、
キィが出迎えにやってきたのだろう。
最近、小さい人は気が向けばスリッパを出してくれる。
何か土産でも買って来ればよかったと思いながら、
ぎぃと今に続くドアが開いた音に、鉄火は振り向いた。
「きいこ、ただい、」
帰宅の挨拶は途中で途切れた。
鉄火の目の前に現れたのは、
今朝、出先に手を振ってくれた小さい人ではなく、
白い布を頭からかぶった異彩の生き物だった。
体長は1m足らず。
全身は白い布で覆われ、上腕はなく、
二本の素足だけが僅かに見えてる。
切れ長に縁どられた両眼以外に顔のパーツもなく、
お化けの仮装というには妙にのっぺりとし、
それでいて異様な目力を感じる。
「…きいこ、か?」
戸惑いのままに鉄火が口にした名前に、
その生き物は答えなかった。
代わりにジツと鉄火を見つめ、
カツと目を見開いたかと思えば、勢い良く叫んだ。
「メジェド!」
「…め、メジェド?」
困惑で、鉄火が動くことが出来ないうちに、
肝心の生き物は、いったい何に満足したのか、
むふーと偉そうに鼻息を吹いて、
そのままスタスタと居間へ戻っていった。
ある種の諦念を覚えながら、鉄火はそのまま靴を片付け、
自身も居間にもどると、先に帰っていたらしく、
お茶を飲んでいたカオスに声をかけた。
「おい、お前の娘、
また、変なことになってるぞ。」
「己が知らないからと言って、
仮にも異国の神を変とか、悪し様に言うのは感心しない。」
「いや、悪し様とかそういう問題じゃないっていうか、
あれ、神様かよ! 神様の真似なのかよ!」
うちの居候は下手に魔王なだけに妙な知識を蓄えていて、
それを幼い娘に吹き込むから質が悪い。